「情報通信法(仮)」と「漫画・アニメ・ゲーム表現規制法(検討中)」とを結びつけてみる。


 「情報通信法(仮)」という法律は、経団連意見書:IT革命推進に向けた情報通信法制の再構築に関する第一次提言 −「事業規制法」から「競争促進法」の体系へ −=アバウトに言えば「放送・通信の縦割り行政による参入障壁を取り払ってもっと自由競争させろ!」という要望=に応えて研究されている、いわば「情報通信『規制緩和』法」なのですが、その裏側で、何が論議されているかというと……

総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会中中間取りまとめ」(PDF) より、「公然通信」(ブログ・掲示板等を含む通常のWebサイトはここに分類される)に関するコンテンツの制限ルールについての記述内容を抜粋。


通信コンテンツと憲法上の「表現の自由」との関係では、表現活動の価値をも勘案した衡量の結果として違法として分類されたコンテンツの流通は、表現の自由の保障の範囲外であり、規律することに問題はない。また、有害コンテンツ流通に対する規制も、有害図書に関する青少年保護条例による認定基準が最高裁で合憲とされていることを踏まえれば、規律の対象とする余地はあると考えられる。


(中略)


その際、特に有害コンテンツ流通について、「自殺の方法」や「爆弾の作り方」、「ポルノ」など、違法とは必ずしも分類し難い情報ではあるが、青少年など特定利用者層に対する関係では一定の規制の必要性があるものに関しては、有害図書防止条例などの手法を参考にしつつ、いわゆる「ゾーニング」規制(特定の行為等に対して一定のゾーン(範囲や利用方法)に限り規制することを許容する規律手法)を導入することにより、広汎な内容規制の適用を回避しつつコンテンツ流通の健全性を確保することが可能となるため、その導入の適否を検討する必要がある。


 ……まさに「情報通信『コンテンツ規制』法」としての部分があぶり出されてきます。


 そして、これを以前から問題となっている「漫画・アニメ・ゲーム表現規制法」(検討中)、そしてすでに検討している横で活動がはじまっているインターネット・ホットラインセンター(ここに通報された内容について「異議申し立てができない」ことが問題になっています=参考)といった仕組みと結びつけてみると、とんでもないことがわかります。


 警察庁は『バーチャル社会の弊害から子ども守る研究会』という研究会組織を作ってこの問題を討議したわけですが、第六回の議事内容でコミックやアニメ・ゲームなどに関する詳細な討議が行われています。議事の中ではこんな資料まで提示されており(PDF)、この意見がそのまま法律として採用されると、「二次元も含めて」「インターネットによる提供など多数の者の目に触れる媒体も含めて」広く規制の網がかかることになります。
 結局、昨年12月の最終報告書(PDF)は、ダイレクトに法規制を求めるものにはなりませんでした*1。しかし、規制推進派が時期を見計らってふたたび規制の範囲を広げる提言をしてくることは、想像に難くありません。そして、いったんそのように法制化されれば、「公然通信」のプロバイダは規制対象となるサイトを「情報通信法」を法的根拠として公開停止(削除)することになるわけです。


 このように、複数の法律が「有機的に」結びついて、表現内容の制限が実効性を持つに至る、という「わかりにくく」て「精緻」な仕組みが築かれていきます。もちろん、規制されなければならないコンテンツがあることは理解できますが、本来の規制対象と「類似している」だけで「犯罪を教唆・誘発する可能性がある」として安易に規制対象に追加されることについては、「犯罪の現場にそのようなメディアがあったから規制する」という論理しかなく、それらがもう一面で持つ「代替的な性メディアにより、性欲が解消され、結果的に犯罪が防止されるという観点」(参考)が欠落しているなど、多面的な分析に欠けており、このまま放置するわけにはいきません。このような「健全性の確保」のための活動が地下に潜り、かえって多くの犯罪を誘発してしまう可能性を考え、必要以上の規制をかけることを厳に慎むよう、作り、楽しむ側が声を大きくして訴えていく必要がある、と強く思います。

*1:しかし、「同人誌」までもが規制の可能性のある対象として考慮されるに至ったことで、『同人誌と表現を考えるシンポジウム』([http://sokubaikairenrakukai.com/news070330.html:title=「開催のお知らせ」]/[http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/21/news010.html:title=ITMediaによるレポート])が開かれたのは記憶に新しいところです