まさかこんなことに……可能性に気づかなかった私が悪い。医療用弾性ストッキングによる褥瘡(じょくそう)

 ひょんなことから三泊四日の入院をしたのですが、その間に予想外のことが起きました。自分の無知もあったと思うので、ここに書き記しておきます。

 二日目に手術をしたのですが、その前の晩の20時から、医療用弾性ストッキングの着用を命じられました。いわゆる「エコノミークラス症候群」の予防のため、ということでその場では納得してつけたのですが、私は普段の靴下でもゴムの部分の圧力が強いとすぐに赤く腫れてかゆみが出て来てしまう人。もともと膝から足首までの間、特に前側が痩せており、皮膚が薄く、すぐ下を血管が流れているため、締め付けることで血液の流れが阻害されてしまっているのではないか、と推測されるのです。このため、靴下上部のゴムの部分はわざわざ外側に折り曲げて、圧がかかりにくい状態にして靴下を穿くことが、私にとってはごく普通なのです。

 そんな人が、手術の翌日の朝8時まで約36時間もの間、圧の強いハイソックスを穿いた結果、どうなったか。みにくい写真を載せても仕方がないので文字で症状を説明すると、両脚の次の部位に「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる阻血性組織障、具体的には発赤(紅斑)が発生してしまいました。

  • ハイソックスの最上部(しっかり身体にフィットさせるため繊維が厚くなっている)
  • 脛(すね)の前側に突出している骨に隣接(内側)する部位の皮膚

 褥瘡という言葉は聞いたことがない、という人も多いと思うので、親切に治療法も含めて掲載されていたWebサイト(要するに私自身も自分の症状をWeb検索で調べたわけです)から、その定義を抜粋しておきます。

 日本褥瘡学会では、褥瘡を次のように定義しています(日本褥瘡学会,2005)。

「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」

 つまり、外力がかかることで骨によって圧迫された組織が障害された状態が褥瘡です。さらに、圧迫には垂直方向に圧縮する力だけでなく、「引っ張り応力」「せん断応力」といわれる圧力がかかっています。それらによって組織に「ずれ力」がはたらき、組織障害が助長されるのです。

出典:アルメディアWEB 【ガイドラインに基づく まるわかり褥瘡(じょくそう)ケア】 「Part1 褥瘡(じょくそう)はどうしてできる? どう治す?」内「褥瘡(じょくそう)って何? 発生のメカニズムは?」

 この褥瘡、通常は「床ずれ」と呼ばれているもので、寝たきりの方などに発生することが多いのですが、まさかそれが医療用弾性ストッキング、しかもわずか1日半の着用で発生してしまうとは、実に意外でした。私自身がいい年齢になっている、ということもあると思うのですが、そういう病状が発生する可能性がある、ということにとっさに頭が回らなかった私が悪かった、とも思うのです。

 いまはまだ脛の部分に微妙にしびれがあり、速く歩くことができない状況です。症状自体は軽いもので、1-2週間以内に治るとは思われますが、私の今回の経験からお話しできることは次の一点。

 いつも靴下のゴム部分を折り曲げて穿くような方は、医療用弾性ストッキングが出てきたら、看護師さんとよく相談されることを強くお勧めします。