おすすめ:いよいよ再演と地方巡演の青年劇場「臨界幻想2011」

 

 「なぜこれだけ見えていたことが防げなかったんだ~!」

 

 終演後、あまりの悔しさに思わずこう叫んでしまった演目です。

 

 所属している地区労(東京23区内なので区労協ですが)で演劇鑑賞会があって、青年劇場さんの「社会派」演目は毎回真剣に(※楽しく、ではないのがポイント)拝見させていただいております。その中でも「普天間」と並んで印象深かったこの演目が、いよいよ再演と地方巡演を迎える、ということで、ささやかながら宣伝させていただきます(※こう書いておけば「ステマ」疑惑ともおさらばさ)。

 

 なぜ、冒頭の科白が出てきたのか。それは、この作品「臨界幻想」の初演が1981年、なんと30年以上前に遡る、ということに起因します。ネタバレは避けたいので詳しくは書きませんが、「2011年の3.11=すなわち、東日本大震災および大津波=を外的要因として起きたあのこと」が30年以上前に「イメージ」されていた、ということ。「人間がイメージした(できた)ことはやがて現実になる」ことが図らずも証明されてしまっています。そのイメージに至らせたわけは、ひとえにこの舞台を創るにあたって、制作陣が原子力産業のずさんな実情を調べ上げ、明らかにしていった、綿密な取材によるところが大きいのは間違いありません。

 

 そしてもうひとつスポットが当たるのは、現場(=原子力発電所の原子炉建屋内)で働く人たちの過酷な労働実態です。この話は、基本的にそこで働き、若くして世を去った一人の青年の母を中心に動いていきますが、ドロドロとした「原子力ムラ」側にいる人たち、それに従うべきだという人たちに翻弄されることなく、真実を追い求め続けることがどれだけ困難を伴うことなのか、が合わせて明らかにされていきます。ここには同じく働く者として、ほんとうにこんなことが許されていいのか、という怒りが改めてこみ上げてきます。

 さらに、劇中には、庶民には一切知らされてこなかった「事実」が、いくつも登場します。それらを知りたい、というきっかけだけでも、この劇を見る価値は、そのチケット代金を遙かに超えて大きい、と確信を持って言うことができます。

 

 安倍晋三内閣総理大臣は、先日の産業競争力会議での議論を踏まえて、エネルギー政策に関して、「経済産業大臣は、前政権のエネルギー・環境戦略をゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築すること。」と指示を出しています。

(そのほかの指示も含めて原文はこちらに

 その「責任あるエネルギー政策」に関して、少なくとも「あってはならない」方策とは何か。この舞台を「若くして世を去った一人の青年の母」の視点をなぞっていき、その「悔しさ」を共有するならば、自ずとそれは見えてくることでしょう。

 

青年劇場さんの舞台「臨界幻想2011」東京再演は2/14・15@六本木・俳優座劇場、そして2/17から3/9にかけては東北・関東・東海・北陸・中国各地を巡演します。詳しくは「臨界幻想2011」紹介ページから。